【著者】 島 恭彦
【発行】1953年
【頁数】292ページ
島恭彦(1910-1995)は財政学の研究者であるが、官業論の一部として取り組んだ国鉄の問題に関心を引き付けられ、その研究に一時没頭し、その成果を本書にまとめた。
「国鉄の荒廃」「国鉄の危機」に関して、「官僚の非効率」や「官業の独占資本による支配」という古い教説を繰り返しても意味がないとし、日本の資本主義構造の問題そのもの──たとえば民主化が形式的で実質を欠いていること──にその要因を求める。統計的数値も多く盛り込まれており、戦前・戦中・戦後の国鉄の状況を知るには不可欠な資料といえる。
その後国有鉄道は民営化され30年近くが経ったが、本書に書かれている「殺人的な混雑やそれから派生する色んな被害」「勤労大衆は…貨物以上に丁寧に取り扱われてはいない」といった記述はいまだにリアルに響く。
(底本:1953(昭和28)年5月25日発行 第1版第2刷)
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予定価格 (PDFのみ):
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2,200円(税込) 2,000円(税抜)
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予定価格 (PDF+POD):
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8,800円(税込) 8,000円(税抜)
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目次
序論 問題の提起
一 国有鉄道の機構改革
二 国有鉄道は如何に戦争に奉仕したか
第一章 国有鉄道の創出
一 市場の発達と鉄道
二 わが国に於ける市場の展開と鉄道
三 鉄道技術、鉄道官僚、鉄道資本の創出
第二章 鉄道国有化の本質
一 鉄道国有の「経済的必然性」
二 鉄道国有化への政治的、思想的過程
三 私有鉄道の買収よりみた鉄道固有の性格
第三章 国鉄資本の権力的基盤―鉄道特別会計の成立をめぐって―
一 はしがき
二 鉄道特別会計前史
三 日清戦争後の国鉄資本調達に関する問題
四 鉄道国有と鉄道特別会計
五 「鉄道会計の独立」は実現したか
六 大正、昭和期への展望
第四章 国有鉄道における資本と労働
はしがき
一 大正期における国有鉄道の概観
二 国鉄における資本投下の不足
三 国鉄財政をmwぐる独占資本の政治
四 国鉄における労働問題及び労働政策
むすび
参考文献