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みなさまからの声

駒澤大学教授・大阪市立大学名誉教授 石川純治さん(会計学)

駒澤大学教授・大阪市立大学名誉教授 石川純治さん(会計学)

古典的名著の復刊

日本評論社は2018年に創業100周年を迎える。創業が1918年、大正7年というから出版社としては老舗だ。その100周年の記念事業として「日評アーカイブズ」が立ち上げになった。その「立ち上げにあたって」のなかで、日評の原点にも通じる点が、次のように記されている。

「…(中略)このような中で、1938(昭和13)年から1943(昭和18)年にかけての河合栄治郎事件、1942(昭和17)年から1945(昭和20)年にかけての横浜事件と、戦前を代表する二つの言論弾圧事件の試練にも見舞われました。弊社が表現の自由、言論の自由を堅持する出版社との評価を得ていることもこうした経緯によるものといえます。」

注目すべきは「表現の自由、言論の自由を堅持する出版社」という点であろう。この点で、法律書や経済書に比して、表現の自由や言論の自由という問題に直接かかわる会計書は(例外はあろうが)あまりみかけない。その点で、日評と会計書とはあまり縁がなさそうだが、実は日評が戦前に刊行した『現代経済学全集』(全30巻)のなかに古典的な会計書がしっかり収められている。高瀬莊太郞の『会計学』(第23巻、1929年)、『企業財政論』(第30巻、1933年)、そして中西寅雄の『経営経済学』「(第24巻、1931年)である。高瀬莊太郞はグッドウィルの研究で、また中西寅雄は個別資本学説の展開でつとに有名だが、そうした古典的名著が日評から刊行されていることをあらためて知る思いがする。

さらには、「100周年は弊社の単なる節目ではなく、社会と切り結び、立ち位置を明確にしつつ出版社の社会的使命を果たすための機会として捉えております」とも記されている。

その「立ち位置を明確にする」という点が重要だ。古典的名著があまり顧みられない今日のアカデミズムの現状をみるとき、当時の錚々たる経済学者などによる古典の復刊は知的財産の再生であり、その意義はまことに大きい。

早稲田大学教授 大日方純夫さん(日本近代史)

早稲田大学教授 大日方純夫さん(日本近代史)

時代のなかで、時代とともに、時代を超えて

今年(2015年)は、アジア・太平洋戦争が終結して70年目だが、他方でそれは、美濃部達吉の天皇機関説が封殺されて80年目、治安維持法が成立して90年目の年でもある。100年ほど前の「大正」の「デモクラシー」が、いかに「昭和」の戦争と「ファッシズム」の時代へと“暗転”していったのか。「戦争」と「秘密」によって、平和と民主主義が危殆に瀕している今の時代こそ、あらためて過去を省みるべきであろう。大正デモクラシーのなかで生まれ、河合栄治郎・美濃部達吉・末広厳太郎らの著書を送り出してきた日本評論社の膨大な書目リストを見るにつけて、その思いは強い。「日評アーカイブズ」は、時代のなかで、時代とともに生きてきた出版文化の“果実”を、時代を超えて現代に蘇らせる試みである。過去の知的遺産を軽んじたままで前に進む社会は危うい。

ところで、言論人や学者の知的達成だけでなく、日本評論社の書目のなかで目をひくのは、直面する時代そのものを克明に映しとった作品である。たとえば、染川藍泉『震災日誌』は、一庶民(サラリーマン)の視線で、関東大震災直後40日余の東京の様子を再現してくれる。また、財政・金融・運輸交通・貿易・保険・市場・労働問題・農漁業・工業など、各側面から大震災の経済的な打撃を追跡した『大震災経済史』は、「後世、大正の大震災を研究するものの為めに誤り無き経済的記録を残そう」とした時事新報社経済部員の「努力の一結晶」である。そして、『世界は日本の震災を如何に見たか』は、世界各国の新聞・雑誌が、いかにこの大震災を報じたかを伝える。これらは、東日本大震災後の今、あらためて災害とは何か、そして、これにどう向き合うべきかを、歴史を介して教えてくれる。

さらに、戦後70年にあたって着目すべきは、アメリカ合衆国戦略爆撃調査団の報告書を訳出した『日本戦争経済の崩壊』である。調査の目的は戦略爆撃の効果を判定・検証することにあるが、そこには、戦時中、「国家機密の鉄壁」によって覆い隠されてきた真相が浮き彫りにされていて、有沢広巳が序文で言うように、「日本帝国主義の『病理解剖』」となっている。日中戦争・太平洋戦争期の真相をはっきりと認識しなければ、正しい将来への展望はあり得ない。こう記した1950年の有沢の言葉を、あらためて銘記したい。

元東京新聞・中日新聞論説副主幹 飯室勝彦さん

九州大学教授 高瀬 正仁さん

先人の知恵と思考を知る

過去の書籍、文章を読み返すと、そこにある重大な教訓を見逃したために過ちを犯したことに気づいて反省を迫られることもたびたびある。現在を考え将来を展望するとき、歴史的事実を振り返るだけでなく、それぞれの時代に先人が何を考えたか、どんな知恵を絞っていたのかを知っておくことが大事である。

たとえば加藤周一の「近うて遠きもの・遠くて近きもの」という文章である。

「原子爆弾とは制御機構の故障した(原子力)発電所のようなものである。」「核戦争のおこる確率は小さいが、おこれば巨大な災害をもたらす。原子力発電所に大きな事故のおこる確率は小さいがゼロではなく、もしおこればその災害の規模は予測し難い。一方で核兵器の体系に反対すれば、他方で原子力発電政策の見直しを検討するのが当然ではなかろうか。」―要約するとこのような文章が書かれたのは1999年である。

数年前、ある大学の入試問題のテキストとして使われたが、入試に関わった人々は東電福島原発の事故より10年以上も前に事故を予告した予見性にあらためて驚くとともに、重大な“予言”を軽視していたことを深く反省した。

加藤の文章はまだ比較的容易に見つけることができるが、末弘厳太郎の「震災についての感想」となると簡単には見つからない。1923年の関東大震災の際、軍隊が治安回復や橋梁などの復旧に活躍し、市民から感謝されたことをめぐり「感謝するあまりミリタリズム賛美になるのは愚かだ」と警告した短い文章である。

東日本大震災の救援、復旧活動に自衛隊が活躍した後、自衛隊に対する国民の目がそれまでとかなり違って容認的になってきたことを考えると、「92年前の警告」はまだ生きていると言えよう。市販されてはいるので多くの人に読んで欲しいが、どこでも、誰でもすぐに入手できる状態ではない。

まして大正、昭和初期の著作物は名著とされるものでも研究者でさえ目にすることが難しいものが多い。

しかし科学技術の進歩はそのような壁を破ったようだ。今度の試みにより、名著の誉れ高くても古くて入手しにくい書籍、大きな図書館に通って探すしかなかった「昔の名著」を居ながらにして読めるようになるのは画期的である。

安倍政権が、「未来志向」と称しながら実際は復古主義、平和憲法下で生まれ変わった日本の歴史を切り捨て、平和憲法を破壊しようとしているいま、過去を学ぶことはますます重要になっている。

未来志向の古典学習の教材としておおいに役立つものと期待している。

九州大学教授 高瀬 正仁さん(多変数関数論と近代数学史)

九州大学教授 高瀬 正仁さん

日本評論社の創業100年を記念して日評アーカイブズの企画が立ち上げられたとうかがって、とてもうれしく思いました。大歓迎です。すでに復刊されて販売中の書籍と復刊候補の書籍の一覧を眺めたところ、橘樸、美濃部達吉、穂積重遠、末広厳太郎、河合栄次郎、下村宏、上杉慎吉など、伝説的な著作者たちの著作が打ち並び、まったく目の覚めるような思いでした。鈴木梅太郎やダーウィンの著作もあり、『逐条解説 国家総動員法(増補)』などという幻の書物までありました。

長い間、西欧の近代数学史の研究に従事してきましたが、16世紀から19世紀あたりに出現した数々の古典の実物を閲覧することは基本中の基本であるにもかかわらず、実際には非常に困難で、悩みの多い時期がずいぶん長く続きました。ところが何年か前からインターネットを通じてさまざまな古典を見ることができるようになり、文献調査上の苦しみは大幅に縮小されました。書名を知るのみだった200年前、300年前の作品をpdfファイルの形で入手できるようになったのですが、それとは別に、欧米の出版社の中には、古典をそのまま復刻し、簡単な表紙をつけて低価格で販売するという事業を行なっているところもあります。その趣旨は、このたびの日評アーカイブに通い合うものが感じられます。

時空を越えて、古今東西の書籍が一堂に会する空想の巨大図書館が現実のものとなり、自由に閲覧できるようになってほしいというのは、本を読む者の永遠の夢です。日本評論社の1918年から1952年までの書籍目録を参照するとおよそ3000点もの書籍が並び、どれもおもしろそうで、書名を眺めるだけでも心がはずみます。日評アーカイブズの企画が順調に進展し、巨大図書館の夢が正夢になる日が近づくよう、心から期待しています。

明治大学特任教授 長岡 亮介さん

明治大学教授 長岡 亮介さん写真:河野裕昭

いまでこそ「あちらにもこちらにもアーカイブ」であるが、私がこの言葉をはじめて知ったのは「アルヒーフ」という不思議な響きを持ったドイツの音楽レコードのシリーズ名で、であった。当時、素晴らしい音源を忠実な音質で聞くことの出来る音楽レコードは庶民の憧れの的であり、だからこそ名曲の名演奏の頂点を飾る古典シリーズにつけられた「アルヒーフ」という単語を調べ、この名をつけた版元の心意気に大いに感動したものである。

単なる文書、単なる記録が、後に貴重な資料になるという歴史の奇跡は一般には否定出来ないが、記録が増えるほど解読と理解の負担も増大することになるから、記録が増えること自身が本当に貴重なことかどうか分からない。むしろ、だからこそ、しっかりと伝承したい文化を凝縮した《アーカイブ》がますます必要になるのである。

「最新」がもてはやされる自然科学の分野にも、決して色褪せない《歴史的な作品》がいろいろある。現代に生きる我々は「忙しさ」にかまけて耳を傾けることをしばしば忘れがちであるが、《時代を牽引した学問の声》は朽ちることのない力を持っている。

従来は、「暇と金と運」に恵まれた人以外にはアクセスが困難であった、そのような古典がディジタル技術の進歩で手軽に利用できるようになるという。「遠方の朋」を募って復刊出来るという現代的なアイデアも斬新な魅力だ。反対に、書架に眠っていて探索すら困難な書籍に対して堅牢な電子化を実現することも重要かつ喫緊な課題であろう。

19世紀末に出た Ostwalds Klassiker der exakten Wissenschaften の現代日本版がすぐそこまで来ている。資料を求めて内外の図書館や古書店を探し回った苦労は想い出の中に封印し、情報通信技術の革命の恩恵に浴する時代が来たことを大いに喜びたい。我々の社会の抱える問題は今日ますます深刻であるが、そのただ中にあってこのアーカイブズの誕生は《救いの希望》だ。

大阪学院大学教授・一橋大学名誉教授・弁護士 村井 敏邦さん

大阪学院大学教授・一橋大学名誉教授・弁護士 村井 敏邦さん

「葬ったはずの亡霊が再びよみがえってこようとしている」。350年前にベッカリーアが嘆いた現象が、現代日本に再現されようとしている。

憲法9条が葬り去ったはずの戦争への道が復活しようとしている。今ここで何をすべきか。それぞれの方法があるだろうが、第2次世界大戦への道を振り返り、その轍を踏まない方策を考えるのも、一つの方法である。「日評アーカイブズ」はその一つとして評価したい。

治安維持法や統制法令、国家総動員法がどうして成立し、どのような運命をたどったかを知ることは、現代日本がたどろうとしている道の先にあるものを知ることでもあろう。「日評アーカイブズ」は「NHKアーカイブス」以上の有益な情報を提供してくれるであろうことを確信し、期待している。

名古屋大学名誉教授 森 英樹さん

名古屋大学名誉教授 森 英樹さん

「戦後レジームからの脱却」を叫ぶ人物が、「戦後憲法」のもとで首相になるというのは、考えてみれば奇異なことである。ここで「戦後」とは「戦争の後」といういわば普通名詞のことではない。全ての戦争は、終われば「戦後」になるが、「戦後憲法」がそうであるように、1945年までの戦争を拒絶の対象にした「戦後」が、いわば固有名詞のように今も輝く。この「戦後」を「レジーム」と呼んで蔑むとき、その「脱却」先に「戦前」の復位があることは、周知のとおりだろう。してみるといま「脱却」先のありようを訪ねることは、すこぶる重要である。

気が付けば戦火の中にいた、ということのないようにするためにも、「日評アーカイブズ」に期待するところは大きい。

明治大学教授 中舎 寛樹さん

明治大学教授 中舎 寛樹さん

日評には、学生時代からずっと、対立軸を示す出版社、ちょっと角度のある視点を提供する出版社というイメージを持ってきた。

民法の分野だけでも、末弘嚴太郎博士、末川博博士は当然として、我妻栄博士、中川善之助博士などもまた、体系書等を著される傍ら、その種の名著を数多く日評から上梓されてきた。それらを手にすると、これを世に出そうと考えた当時の著者の信念とそれを裏で支えた編集者の気概が今も生き生きと伝わってくる。

自らの立ち位置をいとも簡単に決めてしまいがちな今だからこそ、これまで入手しにくかった名著を自分の書棚に架してその奥深さに学べることを喜びたい。

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