【著者】 赤松 要
【発行】1940年
【頁数】188ページ
雁行形態論を提唱したことで知られる赤松要(1896-1974)は、戦時には国家的統制の意義を強調した経済学者でもあった。
本書で赤松要は、戦争の大きな起因として「民族間の経済的相克」をあげ、「戦争それ自身はまた一つの否定であり、経済の破壊である。…これを通じてより大なる経済的発展を企図する。否定を通じて肯定へ、矛盾を媒介としての総合に飛躍せんとするものである」(前編 第1章)とし、ヘーゲル哲学の影響を感じさせる弁証法的議論を展開する。
平時における「循環的矛盾」の解消には自由経済による価格の自動調節作用が働き国家政策の意義は限定的であるが、戦時の国際的な「構造的矛盾」を解消するには自由を制限する統制が有効とする。
今となっては古色蒼然たる印象も拭えないが、赤松要の理論・思想を読み解くうえで、また国際経済学者が戦争という現実に対してどのような理論を展開したかを知る一例として、重要な著作である。
『新経済学全集』の三冊に分割して掲載されていた論文を、一つにまとめる。
(底本:1940(昭和15)年1月1日発行 第1版、同年5月1日発行 第1版、同年7月10日発行 第1版)
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1,760円(税込) 1,600円(税抜)
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復刊済み
目次
前篇 戦時経済統制の必然性
第一章 戦時経済総論
一 国家の存立とその相剋的矛盾
二 戦争と国防経済
三 国防経済と民需経済
四 戦時経済と経済戦争
第二章 平和時代と戦争時代との交替
一 物価の長期波動と戦争
二 民族の律動的膨張と戦争時代
三 両時代の交替と経済的政治的構造の変動
第三章 戦時経済の矛盾とその剋服
一 平時経済の矛盾とその統制
二 戦時経済の調達形態
三 戦時経済の矛盾とその統制
後篇 戦時経済統制の現象と体系
第一章 戦時国際収支の統制
一 戦時国際収支の矛盾性
二 戦時輸入の統制
三 戦時輸出貿易の統制
第二章 戦時物価統制
一 戦時物価現象
二 価格の直接統制
三 賃金統制の問題
四 利潤統制の問題
五 価格停止令と国際物価並に為替相場
第三章 戦時割当経済
一 戦時割当経済の特質
二 物価割当の階層性
三 物資割当の順位性
第四章 戦時生産統制
一 生産の促進規則
二 生産の阻止規制
三 生産の維持規制
第五章 戦時配給及び消費統制
一 配給統制の全体性
二 配給統制における矛盾性
三 割当配給の調整
四 消費割当制
第六章 戦時労働統制
一 労働力と物資の同一性と矛盾性
二 戦争による労働配分の矛盾と総合
三 労働力再編成の方向
第七章 戦時統制経済の全過程
一 観念経済と実体経済との同一性と矛盾性
二 資金調達と物資調整
三 生産貨幣、消費貨幣の性質と購買力の吸収
あとがき