本書は雑誌「文学界」に掲載された主要な評論の選集であり、昭和23(1948)年に『明治文化叢書』の一冊として刊行された。内容は大きく「解題篇」と「本文篇」の二つに分かれており、前者には国文学者の榊原美文による解説、後者には23本の評論が収められている。
「文学界」は、明治26(1893)年1月に創刊し、同31(1898)年1月の廃刊までに58冊を刊行した。編者の榊原美文は「あとがき」の中で、「文学界」といえば北村透谷の評論と島崎藤村の詩を思い浮かべる人が多いが、その他の同人たちの業績も知らなくては一結社としての「文学界」派の運動を全面的に捉えることはできないと指摘している。続けて美文は、「文学界」派の性格を最も端的に表しているのが評論であると本書編集の意図を述べている。
「…実生活のあるがままのすがたに安んじ得ず、きびしい批判的精神のもと、自我の確立拡充と封建的残存物の排撃に為しうる限りを為そうとした「文学界」同人たちの努力は、今日なおわれわれに、多くの示唆と教訓とを与えるのである。」(20頁)
明治文化叢書
(底本:1948(昭和23)年9月10日発行 初版)
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目次
解題篇
1 ロマンティシズ厶
2 「文學界」
3 「文學界」の評論
1 前期
2 後期
4 評論執筆者
1 北村透谷
2 平田禿木
3 星野天知
4 島崎藤村
5 戸川殘花
6 馬場孤蝶
7 戸川秋骨
8 上田柳村
5 「文學界」分類總目録
本文篇
1 吉田兼好…禿木
2 人生に相渉るとは何の謂ぞ…透谷庵
3 明智光秀…殘花
4 内部生命論…北村透谷
5 俳人の性行を想ふ…棲月
6 桂川(弔歌)を評して情死に及ぶ…透谷
7 純美文界…風潭坊
8 気運已むべからず…風潭坊
9 漫罵…電影窟主人
10 硯友社…無名氏
11 おも影…風潭
12 想海漫渉…孤蝶
13 變調論…秋骨
14 活動論…秋骨
15 業平朝臣東下りの姿…天知
16 廿七年を送る…風潭
17 自然私觀…秋骨
18 美術の翫賞…柳村
19 聊か思ひを述べて今日の批評家に望む…藤村
20 千代の句集を讀みて…天知
21 気焔何處にある…秋骨
22 近年の文海に於ける暗潮…早川漁郎
23 塵窓餘談…秋骨
あとがき